最新USレポ−ト 2011/01

 
 
ドラッグストア研究会 USレポート

第33回

店を強くするにはまずなら屋になりなさい

家の近所に評判の中華料理屋がある。遠くからのお客も多く、予約を取っていないと長時間待たされるほどの人気店だ。特に餃子は天下一品だ。このようにレストランで「おいしい」と評判になる店には必ず名物料理がある。お客は一部の料理(名物料理)を食べて、おいしいとと判断しているのだ。どこからこんなにお客が来るのかと思うほどの大繁盛スーパーマーケットが軽井沢にある。夏になると駐車場探しが大変だ。冬でも混んでいる。八百屋出身のスーパーなので、青果ならこの店との評判だ。九州にお酒が強いドラッグストアがある。売上げの20%はアルコールで、高級シャンパンのドンペリから高級日本酒の久保田まで品揃えされ、地元ではリカーならこの店という評判をもらっており、一般の人から飲食店のプロまでが買いに来ている。このように小売店の場合、お客にあの店は良い店だという印象を与えるには、他の店に絶対に負けない商品分野を持ち、「あの商品なら・・・」「この商品なら・・・」という「なら屋」 にならなければ駄目だ。全てのカテゴリーを充実させるのは経済的にもスペース的にも無理だし、また時間もかかってしまう。

1) 「なら屋」作りのメリット

a) お客からの信頼

人は一つのものが優れていると、全てが優れていると判断する傾向がある。これを 心理学では「連合の法則」という。

b) 取引先からの信頼

街一番の強いカテゴリーを持った小売店に、メーカーや卸が一目を置き、色々とサポートしてくれる。

c) 従業員の自信

従業員教育で大切なことは、自信を持たせることである。従業員が一つのことに自信を持つと、接客も自信を持って出来るようになり、お客の信頼感も高まる。他の仕事にもその自信が波及し、店全体の信頼感が高まる。

2) 「なら屋」を作るコツ

a) 「街一番のカテゴリー」を一つ決める

のカテゴリーで街一番になるかを決める。商圏内のお客のニーズやウォンツを吟味した上で、どのカテゴリーが自社にとって一番得意か叉は好きかで決めればよい。「好きこそものの上手なれ」である。

b) 「三つの筋」の商品を品揃えする

「なら屋」になるためには、「売れ筋」「売り筋」「見せ筋」の三つの筋を品揃えする。三つの筋の商品には、それぞれの強みと弱みがある。それをミックスすることにより、カテゴリー全体としての強みを発揮するのである。特に「見せ筋」が競合店との差別化や自店の専門性につながるので、大事に育てる必要がある。

イ) 「売れ筋」・・・市場シェアの高い商品の品揃え。これらの商品にはNBが多い。NBは消費者の信頼、売上げ確保という観点から大切である。弱みは価格が乱れがちで、利益がとりにくいことと、どの企業も扱うので差別化しにくいことである。

ロ) 「売り筋」・・・小売店側が意識的に拡販したい商品である。これはPBや二流ブランド、ローカルブランドに多い。強みは利益率が高く、他店との差別化商品になることで、弱みは消費者の認知力や信頼性が弱いことである。

ハ) 「見せ筋」・・・一流メーカーでも売れない商品を沢山抱えている。何とか育てたいと考えている。このような商品の強みは、一流メーカーという顧客からの信頼感があることと、他店との競争になりにくいので利益を確保しやすいことである。他店が扱わないので差別化や専門性も出しやすい。弱みは商品の認知力が低いことである。

全米No.1ドラッグストアのウォルグリーンは、ドラッグストア業態、スーパーマーケット業態、ディスカウント業態の競合と差別化するために、’82年からヘルスケアに関しての「なら屋」に特化する戦略を取り始めた。当時は調剤薬を含んだヘルスケアの構成比が30%程度しかなかったが、現在は75%になっている。店舗サイズではウォルマートの1/15程度しかないが、ヘルスケアコーナーに関してはウォルマートよりスペースが広く、調剤大衆薬、ヘルスエイド商品の充実を図り、売れ筋・売り筋・見せ筋商品の品揃え強化と、カウンセリング能力を高めている。日本の有数なドラッグストア企業になったC社の取った戦略は「オーラルケア」のなら屋作りだ。当時圧倒的な大きさを持っていた日本のドラッグストア某社にまともに対抗するのでは勝ち目が無い。そこで人々の関心が高まり始めたオーラルケアに関し、通常のドラッグストアでは3尺ゴンドラ6本程度の時代に12本も取り、幅の広さと深さのある品揃え、つまり売れ筋・売り筋・見せ筋の品揃えとカウンセリングを充実した。その結果、オーラルケアならC社と消費者の頭の中に浸み込むマインドスペースを大きく獲得した。それがいつしかドラッグストアの商品ならC社と考える消費者が増え、現在の成功に導かれた。

ロサンゼルスの拙宅のそばにあるスーパーマーケットには、オーガニックならホールフーズマーケット、肉ならブリストルファーム、和食材ならグラナダマーケットという具合に、いずれも「なら屋」として他に負けない強いスーパーマーケットになっている。甲府にあるスーパーマーケットオギノもヨーカドーやイオンなどの超大手が商圏に進出してきているが、しっかりと甲府の人々に支持されている。実際にテレビでもその様子が放映されたが、英国の王室御用達の紅茶、一袋1000円のカレーライス、世界No.1のブランドで6000円程度するピクルスなど珍しい商品が品揃えされている。例え月に1個程度しか売れなくても廃番しないで大切に保持しているという。それは月に20〜30万円をオギノで購入してくれる高額顧客のための品揃えであり、ロイヤルカロイヤルカスタマー作りの商品と位置づけられている。これもやはり珍しい商品の「なら屋」作りだ。

見せ筋商品を自社の育成商品として上手に展開をしている店もある。NBの売れ筋商品だけを売って利益を上げるのは大変である。どうしても価格競争にさらされるからである。また他店との差別化も出来ない。やはり小売店は自店の売れ筋商品を作らなければ、利益も取れないし差別化も出来ない。そのため、自店の育成商品を決め、お客にアピールして自店のスターにしていかなければならない。そのためには次のアクションが必要だ。

 

 

1) スター候補商品の選択

一流メーカーの商品の中から市場シェアの少ない商品を探し出す。お客もパッケージを見たときに一流メーカーの名前があれば安心する。メーカーとしても何とか一人前の商品に育て上げたいので、彼らの応援を得やすい。米国のドラッグストアでは1年に2度取引業者から一流メーカーの商品で市場シェアの低い商品を出してもらい、その中から育成商品を見つけ出している。そして1〜2年間専売的に販売させてもらっている。準PB的な扱いだ。メーカーも育ててもらえるので、Win=Winになっている。

2) 積極的な店頭展開

お客のよく通る主通路沿いやエンド、ゴンドラではゴールデンゾーンの近く、また市場シェアの低い商品のそばに出来る限りの複数陳列をする。

3) 推奨販売

推奨強化商品として位置づけ、従業員の推奨販売を徹底する。商品の特徴とお客にとっての利点を学び、お客に推奨する。推奨した回数を従業員が自分でマークを付けたり、推奨販売コンテストも行えばより関心を高めることが出来る。

地元の人々に人気のあるサンフランシスコのローカルスーパーマーケットの店長が次のように語っていたのが印象に残っている。「当店は超大手のセーフウエイと商圏が同じだが、彼らと同じ商品で戦っても値段では勝負できない。そのため当社では一流メーカーの市場シェアの低い商品を当社のPBという位置づけでスター商品にしている。これは市場シェアの低い商品なので、大手チェーンが取り扱わない。当店のお客は当店が品揃えする商品を信頼して購入してくれる。また知識レベルが高い場所なので、他店が扱っていない商品を求めたがる傾向もある。」

1980年に設立されたホールフーズマーケットの急成長の源は、厳しい品質基準を作って顧客の理解と信頼を得たことだ。そのために店頭には次のような文言(一部紹介)がボードに掲示されている。「我々はナチュラル及びオーガニック商品を品揃えする。防腐剤や着色料などを使って人工的に加工したものよりも、自然の状態で食べた方が味もよく、栄養もある」「我々は防腐剤や人口着色料、人口甘味料などを一切使用しない食品を取り扱う」「我々は新鮮で安全な食品を提供する」「我々は味の良い食品、健康や幸せに貢献する食物を提供する」同社のデビッド店長は、どんなに市場シェアの高い商品でも、当社の品質基準に合わない商品は扱わないと述べていた。「なら屋」を作るには、売れるものを売るのでなく、まず自社の基準に合った商品しか売らないという強烈なこだわりが必要だ。それがお客を引き付け、お客の印象度を強くする。

ドラックストア研究会 会長 松村清

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