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「内外の変化に対する迅速な対応」が小売業の成功を左右すると、日本を代表する大手小売業の経営者が今年の年頭述べていた。日本の良き先行指標となる米国の消費者の間で今大きな変化が起きている。その変化している状況を小売業は「ニューノーマル(新常態)」という言葉で表現し、新しい対応のために革新を図っている。その状況は日本の小売業の今後に多くの示唆を与えている。

T.消費者の変化
米国人は今までにないマルチカルチャー国になり、ショッパーは自分に合ったカルチャーを求めている。そのため「どの消費者にも同じモノを(One Size Fit All)」式ビジネスモデルが通用せず、ターゲット消費者の明確化、彼らのニーズの把握、ニーズに合った戦略が求められている。


a) さらなる多人種国家へ
白人の比率が2000年の69%から2014年には62%に下落し、更なる多人種国家へ変貌してきている。また訪米外国人は、2014年第一位のフランスの84百万人に次ぐ第二位の75百万人もいる。そのため小売業でも多人種に対応出来るよう対策を取っている。例えばドラッグストアのウォルグリーンでは14ヶ国語でコミュニケーションがとれるよう、それぞれの言語を話す薬剤師が3名ずつ1年365日どこかの店舗に配置され、電話で対応してくれる。また小売業の多くが、商圏に応じてラテン語や中国語等と英語を併記したチラシ、店内売り場サインやPOPを展開している。品揃えも、全店共通品揃え率をかつての90%から現在の75%、将来的には50%にしマルチカルチャー化する商圏対応をしている。日本も「爆買い」という流行語が生まれるほど訪日客が増加しており、JTBによると、2014年は14百万人、2015年は20百万人、そして2016年は24百万人と推測している。人口が減少する日本において、外国人は重要な顧客で今後さらなる柔軟な対応が求められている。

b) 資産格差と中間所得層の減少
資産で見ると、トップ1%の世帯が米国総資産の38%、そしてトップ20%の世帯が63%を保有するという資産格差が起きている。それに伴って中間所得層が減少している。ピュー研究所の報告書によると、過去40年間人口の過半数(1971年は61%のシェア)を占め、アメリカ経済を牽引してきた中間所得層(2014年度の世帯年収が3人世帯で42千ドル〜126千ドル)が、人口の半分(2015年は50%のシェア)にまで減少してしまった。そして減った分高所得世帯や低所得世帯が増加して所得の2極化が進行している。少なくともこの30年間に生産性の上昇の恩恵のほとんどは富裕層へ流れ、収入も豊かさもその中でのみ上昇した。一方、ほとんどのアメリカ人の実質所得は変わらないままで、物価だけが上昇している状態だ。マーケットの二極化は既に生々しい形でマーケットに影響を及ぼしており、中間所得層をターゲットにしたGMSや百貨店の凋落は目を覆うばかりだ。

c) 世帯構成人の減少
世帯構成人員は1970年の3.14人から2010年の2.59人に減少し、住宅、車、冷蔵庫などあらゆるものがダウンサイジングしている。そのため新製品も少人数家庭用のパッケージが多くなっているし、小売業も食品のパック販売より、量り売りやシングル売りを増加させている。ウォルマートの業績が芳しくないが、大型パッケージの拡販に力を入れた戦略が時代にそぐわなくなっているのかもしれない。

d) LOHASおよびLGBT人口の拡大
成人人口の30%(6千万人)いる「健康と環境を重視する」ライフスタイルのロハス(LOHAS:Lifestyle of Health & Sustainability)の人々は、オーガニック&ナチュラル製品市場を確立し、今では多くの小売業がそれらの商品に力を入れている。またサステイナビリティ(持続可能社会)のために、資源の枯渇の危険性のある海産物の販売を取り止めたり、環境にやさしい家庭用品を積極的に取り扱う小売業を支持している。ロハスの人々は、同じ機能を持つなら20%高くても環境に配慮した商品を購買する人たちだ。オーガニック野菜のサラダを提供しないレストランの人気が落ちている。
一方、米国では高学歴・高所得者層も多いLGBT(レズ・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダ)のレインボーマーケットは拡大し、小売り、観光や金融分野での取り組みが加速している。
ジェトロ海外調査部の報告によると、LGBTの人々は人口の7.0%程度のシェアを持ち、8350億ドル市場を築いている。その存在も徐々に社会的に認知され、企業が彼らに合った製品の開発や販売を強化している。彼らは新商品や新サービスに対しても意識が高く、高額でも自分に合ったものであれば、躊躇せず購入する意欲がある。マーケティングへの対応度でも、LGBT向けにつくられた広告には敏感に反応し、その企業やブランドに好意的な印象を抱き、購入に結び付くことが多い。LGBT向けに熱心なカジュアルアパレルのバナナ・リパブリックや高級百貨店ニーマン・マーカスでは、LGBTのショッピング頻度は一般の3〜4倍もある。他にもネットショッピングでは2倍以上、高級車の購入比率も2倍以上、美容・交際費・旅行の年間支出額は1.2倍となっている。LGBTの人々の多くの人はLOHASでもある。百貨店、専門店、スーパーマーケット、ドラッグストア、レストランの中には彼らのシンボルマークである虹色のステッカーや旗を店に掲げて彼らが安心して利用できるようにしている。日本でも渋谷区の「同性パートナーシップ条例」の制定などでカミングアウトする人が増え、電通総研の調査では、20〜59歳人口の7.5%の構成比で市場規模は約6兆円にのぼる。LGBTの人々に適したマーケティングが必要になってきている。

e) 「ベビーブーマー」と「ミレニアルズ」の二手に分かれる消費の主役
新しく注目を集めているのがミレニアルズと呼ばれる1982年〜2000年の間に誕生した8300万人に及ぶ人口層だ。今まで米国の消費の主役であらゆる流行を作り上げてきた7500万人のベビーブーマーから消費の主役の座を奪う勢いだ。都市型ライフスタイルを好み、生まれた時からITテクノロジーの環境に囲まれ、フォークやスプーンを使うようにテクノロジーを使いこなす。その為店舗とネットをシームレスに活用している。オーセンティック(本物)、便利性、エクスペリエンス(快適買い物体験)、フェアプライス(価値価格)を求める。ロイヤリティ度は低く、必要が生じた時クイックに解決してくれる便利な店をその都度選ぶ傾向が強い。日本にもミレニアルズ時代の人口が2600万人強の21%もいる。この中には今夏の参院選挙から有権者になる18歳以上〜19歳位未満の240万人が含まれる。ITテクノロジーが生活に溶け込んだこのミレニアム層の人々のニーズを把握し、適切な対応をとることが求められている。また75百万人もいるベビーブーマーが毎年420万人もシニア入りしており、ヘルシーなライフスタイルに関心が高く、便利な買い物を求め出している。ベビーブーマーにはかつて下記の表のような特徴があったが、街中へ移住する人の増加、ヘルシー志向、便利で快適な生活を好むライフスタイルに変化してきている。ファーストフード業界でマクドナルドが苦戦する一方、ヘルス志向のチェーンが好調なことや、ウォルマートや大型ショッピングセンターの苦戦は、ミレニアルズの人々の消費パワーの拡大とベビーブーマーのライフスタイルの変化が大きく影響している。

【2大消費者層 「ミレニアルズ」&「ベビーブーマー」】
項目
ミレニアルズ
ベビーブーマー
 誕生年代
1982〜2000年
1946〜1964年
 人口
8310万人
7540万人
 住宅地
都市(アーバン)
郊外(サバーブ)
 食の趣向
ヘルシーフード(鶏肉・シーフード・オーガニック&ナチュラルフード)/
カロリー計算/非ジャンクフード/多い家庭内食事

ファストフードや炭酸飲料/牛肉/飲酒/
多い外食

買い物
ネット&リアル店舗/
ショールーミング
リアル店舗/チラシ
買い物ニーズ
オーセンティック(本物)、便利性/価値価格(フェアプライス)/エクスペリエンス(快適買い物体験)/必要量買い(スモールバスケット)
低価格/まとめ買い(ラージバスケット)
ロイヤリティ度
低い
高い


a) ロイヤリティの希薄化と、低くなった業態の壁
スーパーマーケット業界において、ロイヤリティプログラムのメンバー数は前年比で2013年は1%、2014年は2%減少し、ロイヤリティ度が低くなっている。またロイヤリティカードのアクティブ率は42%で2年連続減少している。2014年の調査によると、9%のショッパーはプライマリーストア(決まった店)を持たず、2012年比で3倍に増加している。また一般消費財の購入において、ショッパーの80%以上は3チャネル以上を利用している。また多くのショッパーは食料品購入の為に3人に一人はスーパー以外を利用している。そして下図の通り「ショッピングの目的によって業態を使い分ける消費者が増えている。

【ショッピング目的による業態の使い分け】
ショッピングの目的
利用業態
 貯め置きショッピング
 スーパーマーケット、スーパーセンター、ホールセールクラブ
 間に合わせショッピング
 ドラッグストア、コンビニ
 クイックショッピング
 ドラッグストア、ダラーストア、コンビニエンスストア、ネット
(資料)ウォルグリーン

b) 来店頻度の減少
店舗への訪問頻度が減少し、グローサリーストアの場合2005年の週2.2回から2014年は1.6回へ減少

c) 「即使用型購買の増加」と「貯め置き型購買の減少」
買い物は「Now(今)ニーズ」の「即使用型購買」が増加し、「Future(将来)ニーズ」の「貯め置き型購買」が減少している。特に若いショッパーにその傾向が強く、彼らの家庭用冷蔵・冷凍庫や食品庫には、食品が詰まっているということはない。「Buy Now, Eat Now」という即使用ニーズショッピングは食料品買い物の25%を占め、買い物後1時間以内に食べるのは全食事の15%を占めている。そのため小売業は購入商品がすぐ使用できるようイートインコーナーや軽食機能の設置、即食商品(惣菜・サンドイッチ・サラダ・淹れたてコーヒー・量り売りアイスクリームなど)の強化をしている。その一方、まとめ売りや超大型サイズ商品の売れ行きが落ちてきている。

d) 男性による家事やショッピングの増加
男性による家事・ショッピングが進行している。かつてのように家事は主婦の役割でなく男性がその40%以上を負担している。男性ショッパーの特徴としては、分かりにくい売り場や使い方が面倒な商品を嫌う。一般的に男性はシャイなので、分からなくても店の人に聞かない。クオリティを重視するので女性より価格志向が低い。なじみの店・なじみの従業員を好み、女性よりロイヤルティが高い。アルコールや飲料水カテゴリーの購買率が女性より高い。惣菜・サンドイッチなど即食品を好む。このような男性の買い物志向を理解して店作りをすることが重要だ。ドラッグストアの場合、男性化粧品、スポーツケア商品、健康食品、冷凍・冷蔵食品、即食商品(惣菜。サンドイッチ・サラダ・カット果物・ドーナツ)、雑誌の品揃えを強化している。

e) 価格に対する考え方の変化
これまで価格に対する考え方は物品価格そのものであったが、今は物品価格+時間+エネルギー(ガソリンや手間など)の総合価格になった。そのため買い物に時間のかかる大商圏で超大型店ウォルマートの「エブリデーロープライス」戦略の魅力が薄くなってしまった。


  

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