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米国の消費者の店に対するロイヤリティ度の希薄化(一人約10枚のロイヤリティカードを持つ)、ネットショッピングの普及による来店頻度の減少(グローサリーストアの場合、来店頻度が2005年の週2.2回から2014年は1.6回へ減少)、スモールバスケットショッパーの増加により1回当りの購買量の減少等、リアル店舗に逆風の吹いている米国小売業界において、「消費者の脳に訴求する」戦略がとられ始めている。つまり、小売業界は脳科学の応用をしている。人間の持つ習慣脳に働きかけ、必要性が生じたときに自動的に自分の店を選択してもらい、購入するように仕向けているのだ。


人にはいろいろな習慣がある。朝起きたら歯を磨く、朝食をとる、駅まできまった道を歩く、学校や会社に行く、仕事をする、ランチを食べる、3時頃コーヒーを飲む、帰りに一杯やる、家に帰る、シャワーを浴びる、夕ご飯を食べる、テレビを見てくつろぐ、寝床につく等々、何も考えず習慣的に行動していることが非常に多い。一日の行動の9割以上は習慣的になされているという。習慣化すると行動は自動化され、習慣から外れるとなんとなく居心地が悪い。だから習慣的行動が続くと習慣脳が発達し、同じ店で購入する傾向が続く。一般的に高齢になればなるほど習慣で行動する傾向が強くなり、その矯正も難しくなってくる。だからシニアはなじみの店・なじみの店員・なじみの商品を好み、その利用が続くのだ。


記憶には頭で覚える「陳述的記憶(ちんじゅつてききおく)」と、身体で覚える「手続き記憶」の2種類がある。難しい漢字を覚えたり、計算の仕方を覚えたりするのが「陳述的記憶」だ。これを通して物事を判断したりするとき使う「判断脳」が発達していく。一方「手続き記憶 (習慣・運動技能、知覚技能、認知技能等)」は、同じ経験を反復することにより形成され、「習慣脳」が育っていく。


消費者の買い物の多くは「習慣型購買行動」だ。消費者の購買行動には大きく分けて、高級品やこだわり商品を購入するために情報を集め熟慮して購買する「判断脳を活用した熟慮型」と、情報をほとんど必要としない反復反応行動の「習慣脳の働きによる習慣型」がある。
スー.パーマーケット、ドラッグストアやコンビニで日々行っている購買行動を思い浮かべてみよう。「いつも利用している店だから」「名の知られた店だから」「いつも買っているブランドだから」といった単純なプロセスのみを経て店舗や商品選択をしているケースが多い。こうした購買行動は習慣型購買行動と呼ばれ、消費者購買行動の大部分を占めている。一方、熟慮型購買傾向がある価格の高い商品やこだわりの強い商品の購買割合は、購買全体の中でそれほど多くない。


a) 必要性が生じた時、自動的に来店してくれる
お客は何か必要性が生じたとき、条件反射的に特定のお店を思い浮かべ、自動的にそのお店に足を向けてくれる。ウォルグリーンではこれを「ファーストチョイスの店」と呼んで、そうなることを目指している。
b) 依存症的に来店してくれる
一日に一回コンビニやドラッグストアに行かないと一日が終わった感じがしない人はある種の依存症になっている。このような顧客が増えると、来店頻度は上がり店は繁盛する。
c) 習慣的に行くと店舗評価を贔屓目に見る
ザイアンスという米国の心理学者は、「人間は知らない人には批判的で冷淡に接する。人間は会う回数が増えるほど好意を持つ」と述べている。店舗も同じで、馴染になるくらい頻度多く通うと、好意を持つようになって店舗評価も贔屓目になる。
米国No.1のドラッグストアウォルグリーンでは、たまに来店してまとめ買いするお客を「ボリュームショッパー」と呼んでいる。一回当たりの買上げ金額が大きいので、価格に敏感で固定客化するのが難しい。それに対し、月6回以上来店する顧客を「ハイフリークエントショッパー」と呼んでいる。一回当たりの購買金額はボリュームショッパーと比較して少ないが、年間単位でみれば多くなっている。また一回当たりの購買金額が低いため、価格志向でないから利益客なのだ。この人たちは、顧客数シェアで10%、売上げシェアでは50%を占めている。そして月に6〜14回来店する顧客の56%はドラッグストアとしてウォルグリーンしか利用していない。来店頻度の高い人ほどロイヤリティが高いのだ。ウォルグリーンはこのハイフリークエントショッパーの顧客シェアを20%にし、来店頻度を月8回以上にすることを目指している。


a) セブンイレブン
日本の小売業態で現在最も成功しているのはコンビニエンスストアで、その中でセブンイレブンが他の同業に差をつけて繁盛している。どうしてお客はついセブンイレブンに足が向くのか? 1974年(昭和49年)5月15日東京の豊洲に第1号店がオープンした。当初は「ウィークリーストア(週単位の来店頻度店)」という考えで、週に一度来店してもらうために週刊誌を充実させ外から見える場所に売り場を設置し、週刊誌を立ち読みしているお客につられて来る他の客を誘導させた。その後週に複数回来店してもらえる「デイリーストア(日単位の来店頻度店)」にするために飲料水に力を入れたり、さらに日に複数回来店する「アワリーストア(時間単位の来店頻度店)」にするために朝食・昼食・夕食やデザートに力を入れた。またそれと並行して、ATM機、コピー機、ネットプリント、住民票の写し・印鑑登録証明書の発行、チケットのプレイガイド機能、セブンスポット(無料WiFi)機能、公共料金等の収納代行業務、各種プリペイドカードの販売の実施、淹れたてコーヒーを提供するSEVEN CAFEやドーナツの提供、そして注文した客の7割が店に取りに来る「セブンネットショッピング」等々の来店目的を増加させた結果「ミニッツストア(分単位の来店頻度店)」になり更に来店頻度を高めている。そのため一日に3度来るお客は珍しくない。また弁当・惣菜の宅配・配食サービスである「セブンミール」、店舗で扱っている商品の宅配・御用聞きの「セブンらくらくお届け便」、お店の商品を積み込んだ小型トラックが巡回して移動販売する「セブンあんしんお届け便」などで、顧客の玄関までお店を運んでいる。まさに「買い物に行く」だけでなく「買い物が来る」状態になっており、消費者は毎日セブンイレブンと顔を合わせている状態だ。これらの行為は顧客がセブンイレブンを利用する習慣性を促進しており、習慣脳がどんどん育成されているのだ。
b) ネット販売の成長は習慣脳の発達による
米国では小売業全体の年間成長率は2020年まで4%程度と予測されている一方、ネット販売はその4倍近い成長が期待されている。その結果、現在無店舗販売の小売業に占める売上げシェアは12%程度だが、いずれネット販売に引っ張られて30%になるだろうと予測されている。その要因として「幅広い品揃え」「便利性」「低価格」が良く挙げられるが、それに加えて「習慣性」を忘れてはいけない。現代の人々は家にいても事務所にいても、まずPCやスマホを開ける。電車乗っても多くの人がスマホを操作している。中には歩きながらでも自転車に乗りながらでも見ている人もいる。このように国民の多くはスマホ等の機器をいじることが習慣化し、習慣脳の発達により中毒的になっている。実際に外出するとき財布やカギを忘れるより、スマホを忘れることの方が重大問題だと考える人が多い。この依存症的症状がネット販売を急成長させている。

c) ウォルマートの「満足保証」は習慣化作り
世界一の小売業ウォルマートが最初に店を開いたのは1962年。それから30年強で米国No.1、そして世界No.1の小売業になった。その要因について創立者のサムウォルトンは「Satisfaction Guaranteed(お客様の満足を保証します。万が一満足しない場合はいつでも返金に応じます)」という方針を打ち出して忠実に実行したことだと述べている。「エブリデーロープライス」で来店した顧客が、万が一気に入らなければサービスカウンターで返品に応じるというのは、店舗選択や商品を吟味して購買するという「判断能」機能を弱め、自動的に来店して購入する「習慣脳」を強める見事な心理戦略だ。このように習慣化された買い物では、お客が他の店舗や他のブランドに浮気することもないので、継続的な売上げや利益が確保できる。
日本の小売業においても習慣型購買行動の育成がお店成功のカギを握っている。

 

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