アメリカのドラッグストアを検証し、日本のドラッグストアにあう多彩なプログラムを提案します
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最近米国で新しいビジネスが注目されている。2013年頃から浮上してきたのが、時間の都合がつく人間(パーソナルショッパー)がスマホアプリからの指示で買い物代行をするサービスである。その代表格が「Instacart(インスタカート)」で、急成長が見込めるパーソナルショッピングサービスとして期待されている。同社の成功を追う形で、米国ではamazonの提供する生鮮食品の即配サービス「AmazonFresh」の他、googleの提供する「GoogleShoppingExpress」などが次々と食品の配達サービスを開始している。このように、食品でさえ店に行かなくても買い物が出来る時代がきた。オンライン・ショッピングが定着し、購買代行業も参入してきた現在、小売業者は実店舗に客を呼び込む新たな理由を見つけるのに必死だ。そのカギとなるのが食品部門の導入や飲食店の併設だ。
ニューヨークのメイシーズの旗艦店は、イタリア料理店のStella 34 Trattoriaやスターバックスなど飲食店の拡充、ロサンゼルスのビバリーヒルズにある高級百貨店ニーマンマーカスでも、レストランやメンズフロアにバーを設置している。カジュアルアパレルのUrban Outfittersもマンハッタン店とブルックリン店にレストランを設置。ユニクロも五番街の旗艦店にスターバックスを設置。ホールセールクラブのコストコや家具のイケアもイートインコーナーを設置して食事を提供している。ウォルマートやターゲットなどのスーパーセンターでも食品部門の強化やマクドナルドなど導入し食事を提供。スーパーマーケットラルフスやホールフーズマーケッでは、店内で購入したドーナツやクロワッサン、サンドイッチ、サラダ、寿司、惣菜、ピザ、スパゲティ等がイートインコーナーで食べられる。店によっては、店内の一角にはワインを飲みながら食事が出来る機能もある。つまり、人々はスーパーマーケットをレストランや家庭での食事の代行機能と利用しているのだ。レストランより安価で手軽だし、通常15%以上求められるチップを払わずに済むので安上がりだ。この流れはドラッグストアにも波及しており、フードの品揃えを強化している。加工食品、スナック菓子、パン、牛乳などの乳製品、清涼飲料水、アルコールに加えて、即食(イートインコーナーの配置、焙煎したてのコヒー、作り立てのサンドイッチや寿司、サラダやカット果物、ホットデリ、アイスクリームやヨーグルト等)の販売を強化し、顧客の来店頻度を増加させる試みをしている。実際にサンフランシスコのユニオンスクエアのそばに昔からあるウォルグリーンパウエル店は2階建てに改造し、一階すべてを食品売り場(2階に健康美容商品と雑貨)にして、出来立てのサンドイッチ、寿司、サラダ、スープ、カットフルーツを加工食品、飲料水、アルコールとともに販売している。イートインコーナーも配置されているため多くの人が利用している。このような形態の店はニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、ラスベガスなどの街中に存在し、ビジネス客や観光客に利用され非常に多くの買い物客を集めている。現在米国ドラッグストアの食品の販売構成比は11%で、OTCに次いでわずかな差で3位だが、いづれ追い抜き構成比65%の調剤に次いで第2位の主力部門になるだろう。
このように米国のドラッグストアでは食品を強化しているが、節度を持って展開している。それは米国のドラッグストアが1970年代から1980年代にかけて食品に力を入れ過ぎ、次のような要因から失敗した経験があるからだ。

1) 顧客から見たら何屋だか分からなくなる
2) 売り場が荒れる
3) 従業員が品出しに追われ接客がおろそかになる
4) 店全体の利益率を低下させる。


当時はウォルマートを代表とするディスカウント業態及スーパーマーケットが更に成長するためにドラッグストアの商材を取り込んだ。ディスカウントストアはスーパーセンターになり、そしてスーパーマーケットはコンビネーションストアへと変化していった。当時ドラッグストアはスーパードラッグと呼ばれる700坪〜2000坪もあるような超大型店をつくり、食品や雑貨の品揃えを一挙に広げた結果、HBC(健康美容商品)の売上げ構成比が30〜40%程度になってしまった。そして健康美容商品の専門性が希薄になったドラッグストアは、スーパーセンターやコンビネーションストアとの同質競争になり、飲み込まれて不振を極める企業が増加した。そして不振から脱却するため「基本への回帰(Back to the Basics)という方針を打ち出し、もう一度「3S戦略」(Speciality:専門性、Speed:便利性、Service:接客性)を徹底した。その結果、再度成長路線に入ったのだ。不振な当時は、ドラッグストア業態が消滅する日も近いと述べる人もいたほどだ。 
このような苦い経験をしたドラッグストアは、最重要核部門はヘルスとビューティーと位置付けし、食品はあくまで便利性商品として取扱い、「食品の売上げ構成比は調剤を除いたセルフ売り場の売上げの30%程度を上限とする」という決めごとをしている。
現在日本のドラッグストアも食品に大変力を入れており、下記の表の通り食品&酒類合計で25%近くのシェアを持っている。企業によっては50%を超えるところもある。

【ドラッグストア商品部門別売り上げ構成比(2014年)】
 部門
売上高構成比 (%)
2014年
2013年
2012年
 OTC医薬品
14.1
14.2
15.6
 調剤薬
9.1
8.3
8.5
 ヘルスケア
3.5
2.6
2.8
 健康食品
2.9
3.0
3.3
 ビューティーケア
8.0
8.2
8.7
 化粧品
14.5
15.1
16.5
 ベビー用品
3.1
3.3
3.1
 介護用品
0.2
0.2
0.2
 家庭用品
6.8
6.6
6.9
 日用消耗品
12.0
11.8
12.2
 食品(生鮮以外)
21.3
23.2
18.4
 酒類
2.3
2.1
1.6
 その他
2.2
1.4
2.2
 全体
100.0
100.0
100.0

「ドラッグストアが今後も成長し続けるために大切なことは、まず、ヘルス&ビューティーの専門性がきちんと確立され、その専門性を顧客に認知されること。次に、食品は置けば売れるがいろいろな弊害もある為、セルフ売り場商品の売上げの30%までという歯止めがあること」とウ
ォルグリーンのディストリクトマネジャーが述べていたが、日本のドラッグストアにとって大いに参考になる言葉だ。
このことは米国のお客がドラッグストアを利用する理由を理解すれば分かる。米国某大手ドラッグストアの調査によると、米国の消費者が「ドラッグストアを利用する理由」の1位は「健康と美容に関する専門性」、2位は「便利性」だ。


順位
ドラッグストアの利用理由
1位
 健康と美容に関する専門性が高い
34
2位
 家から近くて便利
27
3位
 安い
16
4位
 ワンストップショッピング機能
9
(資料)米国某大手ドラッグストア

月刊マーチャンダイジング2013年8月号によると、日本の場合、「行きつけのドラッグストアは決まっている」と答えた人は85%存在し、その理由は下記の通りだ。



【ドラッグストアが決まっている理由(複数回答)】
ドラッグストアを利用する理由
1位
 自宅・勤務先から近いから
223
2位
 ポイントを貯めているから
208
3位
 価格が安いから
102
4位
 駐車場が停めやすいから
82
5位
 一ヶ所で衣食住の必需品が揃うから
32
6位
 新商品などの導入が早いから
12
7位
 調剤があるから
8
8位
 スタッフが親切だから
7
9位
 専門的アドバイスが得られるから
4
10位
 親しいスタッフがいるから
4

「自宅・勤務先から近い」(便利性)が1位、「ポイントを貯めている」が2位、「価格が安い」が3位で、「調剤があるから」や「専門的アドバイスが得られるから」等の専門性は非常に低い理由になっている。このことは他業態との競争になった場合は大変もろいという状況をさらけだしている。
今後日本も医療費高騰の抑制とセルフメディケーションの促進により、ドラッグストア利用の理由に必ず「健康と美容の専門性」が躍り出てくる。ドラッグストアが成長するためには「専門性」がおろそかにされた「食品の強化」であってはならない。


 

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