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昨年の夏、シカゴと気温40度を超えるアリゾナのシニアコミュニティを視察した。
日本では在宅医療や看護が政府の主導で盛んに進められているが、米国では一部の大金持ちの家への訪問医療/介護はあるが、それ以外は施設である。各住宅を医療従事者が訪問するのは移動時間が莫大でペイしないからだ。最近の施設で評判なのがCCRC(Continuing Care Retirement Communities:居住者が高齢期に必要なケアを住み替えずに受けられるコミュニティ)で、下記のようなサービスが受けられる。
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構成要素
内容
1
住宅
自立、軽介護、重介護、認知症
2
生活サービス
食事、家事、交通、フィットネス、娯楽など
3
介護サービス
軽介護から認知症対応まで

ビジネスの観点からいうと、CCRCとは単なるシニア住宅でなく、健康・レジャー・食事・
保険・金融・介護等、組み合わせ型の「ライフスタイルビジネス」なのだ。
現在のシニアは価値観の合う他人同士が緩やかな大家族になる「知縁型コミュニティ」を求めている。リタイアメント・コミュニティは、第四の縁(第一の縁=血縁、第二の縁=地縁、第三の縁=社縁、第四の縁=知縁)を作る場所で、そのためには価値観が似ている人々を入居させることが大切だ。AARP(かつての全米退職者協会)の調査によると、リタイアメント・コミュニティに求められる条件として、かつては「温暖な気候」や「リゾート施設」だったのが、近年では「良い隣人関係」「知的刺激」が上位にきている。
リタイアメント・コミュニティの先駆けとして有名なのが、アリゾナ州のサンシティだ。3500haの広大な敷地に3万人以上のシニアが居住し、10のゴルフ場、20のショッピングセンター、
劇場、教会、病院などが備わり、寒さと無縁の温暖な気候で、ゴルフ三昧、娯楽三昧のハッピーリタイア生活を目指していた。しかし、シニアのユートピアと思われたこの街には大きな問題があった。まず世代の偏りで、街の住人は高齢者だけだ。つまり若者がいないため世代交流がないことが街の多様性を損なった。もう一つは、知的刺激不在だ。気候温暖、ゴルフ三昧、ストレスフリーの快適過ぎる環境は、逆に頭や神経を使わず老化につながるおそれがある。高齢者にこそ知的刺激が必要なのだ。
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こうした第一世代のリタイアメント・コミュニティの課題を解決したのが、第二世代のリタイアメント・コミュニティ、つまり「大学連携型の街」である。今までのリタイアメント・コミュニティは長期の介護に主眼を置いていたため、人里離れた地域にあり、孤立感があった。しかし施設の中での受動的な生活より、活動的且つ知的刺激のある生活を求めるライフスタイルが増加したことや、1990年代後半のシニア住宅の建設ラッシュで供給過剰になった結果、差別化のために大学連携型が脚光を浴びるようになった。代表的なケースが、マサチュセッツ州ニュートン市のラッセルビレッジで、ラッセルカレッジのキャンパス内にあり、生涯学習を求める人達210人で満杯で、多くのウエイティングがある。ビレッジ独自の講座に加えて、ラッセルカレッジの講座にも参加できる。入居者同士の交流を促すカフェテリア、フィットネスジム、談話サロン、交通手段などのサービスも充実している。このカレッジリンク型CCRCは、関係者にウィン・ウィン状況を運ぶので評判となっている。入居者のメリットについてはすでに述べたとおりだが、コミュニティ運営会社のメリットとしては、有名大学との提携によるブランディング効果や入居者を獲得しやすいというマーケティング上の効果がある。大学側のメリットとしては、入居者の多くが大学出身者や元職員で、大学に対する愛着が再度強化され寄付が集まりやすいこと、大学によっては、減少する大学生の問題をシニア学生の増加により補えること、教授・学生は居住するシニアをソーシャルモデルとして研究に活用できること、そして人生・社会経験の豊かな人々が学生の相談相手になれることなどが挙げられる。また地域のメリットとしては、雇用の拡大、地域経済の活性化、税収増がある。
さて、一般的なCCRCの通常のサービスは下記のようなものである。
種類
住宅サービス
生活支援サービス
医療・介護サービス
自立棟
(IL = Indepent Living)
・戸建/集合住宅
・原則個室
・共同のリビングルーム等共用
 スペースを配置
・食事、生活支援(掃除、洗濯、
 住宅修繕・維持管理)
・プール、ジム
・社交、娯楽、イベント
プライマリーケア
軽介護棟
(AL = Assisted Living)
ワンルームや1ベッド
ルーム&リビングタイプが多い
プール、ジム、社交、娯楽、イベント等健康状態に応じて利用
食事&入浴介助、服薬管理、着替え
などの支援
重介護棟
(NH = Nursing Homes)
部分介助や全介助が基本
・24時間医療提供体制
・慢性疾患の治療対応
・自立に向けたリハビリ
病院
(Hospital/Memory
Support Center)
・ニーズの高まりにより認知症への対応を
 備えたCCRCが増加
・鎮静剤不使用/身体拘束はしない

米国のCCRCの70%程度は入居金型である。それ以外は賃借型が一般的で、所有型は殆ど無い。

スタイル
契約型式
内容
入居金型
Life-Care Contract
(生涯ケア)
入居金と月額料金の支払いにより、追加料金なしで生涯の住宅・生活支援・介護サービスの提供(生涯ケアの金銭的リスクは事業者負担)
Modified contract
(上記の修正型)
入居金と月額料金の支払いにより、(自立棟でのサービス+軽介護棟/
重介護棟でのサービス)×契約で決められた日数分を、無料または割引価格で提供(生涯ケアの金銭的リスクは入居者が負担する契約形態)
Fee-For-Service
(かかったサービス分支払い)
入居金と月額料金に医療・介護サービスは含まれないが、入居者に必要な時はこれらのサービスを受けられる優先権を提供(生涯ケアの金銭的リスクは入居者が負担する8契約形態)
賃貸型
Rental
(部屋の賃貸)
・入居金はナシ(保証金を求められる場合あり)
・月額料金に、衣料・介護サービスの費用含まれず。入居者は必要に応じてその時の価格で支払う(初期の支出が最も低い契約形態)

シカゴで訪問したCCRCプリムスプレイス・シニアリビングのCEOリルバーン氏は、CCRC成功の秘訣を次のように述べていた。


コミュニティのコンセプトとして、「リタイアメント・コミュニティ」でなく、「リアクティベイテング・コミュニティ」という位置付けが大切だ。リタイアメントという言葉は消極的な雰囲気を与えるが、リアクティベイティングだと、人生の再活性化という意味合いがあって非常に前向きな響きがある。また、「Our Asset Is Our People」つまり、我々の資産は住人そのもので、こんな人と暮らしたいと思わせるコミュニティ作りが重要である。


a) 創る前の「入り口管理」
イ) Continuing Care(継続的ケア)
自立・軽介護・重介護・認知症施設の一体配置と、医療機関へのアクセスがし易いこと
ロ) Healthcare Management(健康管理)
入居時のヘルスアセスメント(ハイリスク者排除)と、継続的ヘルスアセスメントの実施により健康維持
ハ) Educational Marketing(エデュケーショナルマーケティング)
コミュニティの理念・文化・規約を十分理解してもらい、その価値観に賛同する人を
入居させる入口管理の実施

b) 創った後の管理
イ) Resident Driven Community(住民主導型コミュニティ)
コミュニティ活動や運営への参画、他人との関係構築、生きがい、他人への役立ちなど、施しを受ける人ではなく、与える人・経営に参画する人になる
ロ) コミュニティの形成ポイント
入居者は過去の名声などを語らず、今を語るコミュニティにする
ハ) 三者(高齢者・若者・地域社会)にプラスになる
シニアは社会的コスト(支えられる)でなく、若者へのアドバイスや地域社会への
ボランティア活動などを通してプロフィット(支える)になる

そして最後に、彼は理想のCCRCの姿について次のように述べていた。

今までの姿
これからの姿
コンセプト
リタイアメント・コミュニティ
リアクティベイティング・コミュニティ
事業の性格
不動産事業(住宅&支援サービス)
ライフスタイル事業(いきいきシニアライフと継続的ケア)
入居動機
不安
第三の人生を楽しむ
入居時の健康
・健康が不安だから
・単身
・元気なうちに
・夫婦
コミュニティ
住む場所
いきいき生活の場所
コミュニティの解放性
クローズド型
オープン型(地域社会との共生)
オープン型
(地域社会との共生)
施す 住民の自立援助

スーパーマーケット、ドラッグストア、そしてショッピングセンターなどの小売業は、これらのリタイアメント・コミュニティに商品を配達したり、バス等の移動サービスを提供して来店し易くしている。シニアの人々にとって、お店に行くのは単なる買い物だけでなく楽しみの場にもなっている。

 

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