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人間は自分の意見を取り入れられたときにやる気が出てくる。例えば会社で自分の意見を上司が採用してくれたときはやる気満々になり、そして絶対に失敗できないという強い使命感が沸いてくる。その心理を活用して現在米国の小売業では「カスタマー・イン・マーケティング」手法が盛んに取り入れられている。それはお客の声を店の経営に出来るだけ反映することだ。お客の声には店を成功へ導くヒントが一杯詰まっている。モノがない時代にはメーカーや小売店の押し付けでも商品は売れていった。しかし今日のようなモノ余り時代、マーケットが成熟しお客の好みが多様化してくると、生産や仕入れにお客の声を取り入れていかなければ、たちまち不良在庫の山となる。POSデーターに頼った経営は自店の品揃えの範囲内での情報であり、品揃えされている商品以外でお客が必要としている商品を見つけることは出来ない。それとお客は自分の要望を取り入れてくれた店に対しては、店のファンになるし応援したくなるものだ。そして口コミという効果的な無料の広告をしてくれる。
このように、小売企業の考えが「企業中心主義」から「顧客資本主義」という新語のもとに「お客様中心主義」に切り変ったのはリーマンショック以後の不景気からだ。人々が顧客軽視の店舗や自分のニーズを満たさない店舗に来店しなくなったり、不必要なものを一切購入しなくなったからだ。リーマンショック以前の米国の小売業は「株主価値の最大化」が目的で、株価を上げ株主に還元することが最大の関心事であった。そこには消費者不在の政策が跋扈し、時には不正も平気で行われた。例えば世界一のホームセンターのホームデポは、家の修理の依頼に対して不必要な箇所まで修理し、高い請求をしていた。これが発覚してから業績が下降線をたどってしまった。これらのだましの行為がお客の不信感を買うのは当然のことだが、それに加えて従業員モラルの急激な低下につながった。一方、たった4店舗で運営され相変わらず好業績を続けている東海岸のスーパーマーケットスチューレオナードは、会長・社長などの幹部や本社スタッフが毎朝店頭に立ち、来店する顧客に挨拶をし、必要なものはないか始終尋ねて顧客の声を大事にしている。また消費者でもあるパートの人たちの意見を積極的に店の経営に活かしている。自分の意見が取り入れられたパートの人は、拡販に一生懸命になるし、仕事時間外の普段の時も店に来て自分の実施した陳列の売れ行き状況をチェックしている。

最近の米国の小売業は必ずコメントカードを店内に置いている。お客から投函されたカードは社長に直接届けられるようにしていることが多い。企業によっては、コメントや苦情を店側の返事と一緒に「お客様からのご要望」「お客様からのお叱り」「お客様からのおほめ」に分けて、店内に掲示している。店内に掲示すれば、お客の声を大切にしてすぐアクションを起している姿勢をお客にアピールすることが出来る。ホートンコンバースというドラッグストアでは、従業員は 「神の声カード」というメモ用紙をポケットに入れ、お客に求められた要望をすぐ記入して店長に渡す。そして24時間以内にその声に対する対策を立てるという仕組みを取っている。またインターネットで自社に対するお客の声を見ることが出来るので、お客の声を自店の経営の参考にしている。お客の声で品揃えリクエストをもらったものの、自店の方針に合わないために取り入れることが出来ない場合の対処法は大切である。お客に無視されたと思われないためには、「売り場面積に限りがあるため、残念ながら今はお取扱い出来ません。しかし今後も取扱いの可能性を注意深く考慮いたします」という返事は効果的である。「当社の方針で扱えない」というと角が立つが、売り場面積の限界という売り場の広さの問題に転嫁すると納得してもらえるからである。取扱いリクエストが5回上がった商品については、定番として扱う方針を取っている企業が多い。ホールフーズマーケットもお客の声を積極的に聴いて品揃えをしている。出口のところに「お客さまの声」掲示板があり、その掲示板にはお客の声がびっしり書かれた用紙が張られているが、その用紙の下欄に店舗からの返事が書かれている。お客は自分の意見を大切にしてくれた店を評価するばかりでなく、自分の意見で扱ってくれるようになった商品を他のお客に口コミ宣伝してくれる。これは店側にとっても大きなメリットである。同社ではこのような商品に「お客様のリクエストにより品揃えさせて頂いた商品です」というPOPまで付けている。このようにお客の要望を取り入れるシステムを作れば、他のお客も積極的に意見を述べるようになり、より顧客満足を高めることが出来る。米国No.1のドラッグストアウォルグリーンはリーマンショック以後の一時勢いがなくなった。そこで、基本への回帰ということで「CCR=Customer Centric Retailing(顧客中心の小売業)」をスローガンに、お客の声を積極的に取り入れ、数多く寄せられるお客の声の中から抽選で毎月数人に賞金を提供する等、顧客にとって魅力のある店作りに努めた結果、一時の不振を脱却して業績が回復してきている。また品揃えはBDM(Basic Department Management)という考えの下に、お客の声を集め店舗の商圏客にフィットするようにしている。「かつて当店の品揃えは9割の商品が全店舗共通であったが、現在は7割で、将来的には50%まで落とす」とワグナー社長は述べていた。
また多くの小売業が客注(店にない商品のお客からの取り寄せ注文)を積極化している。お客が必要としている商品を全て揃えるというのは限られた店舗規模のために不可能だが、商品がありませんではお客様は店を去ってしまう。そこで「お店にない商品でも、出来るだけお取り寄せさせて頂きます。お気軽に従業員にお申し出ください」というPOPを貼って客注を積極的にしている。客注のメリットは、親切な店というイメージをお客に与えられることと、取り寄せた商品は値引きが必要ないので利益が取れるということで店にもメリットがあり、Win-Winの関係を作れる。お客様からの声に対しては必ず返事を書くことが重要だ。そこにお客とのコミュニケーションが図れる。私の知人は最近長年利用していたスーパーマーケットMを利用しなくなったという。鮮魚売り場で「なまこ」をカットしてほしいと頼んだのだが、売り場の人に「出来ません」と断られた。そこで、売り場でのそっけない対応へのクレームと魚の簡単な調理サービスの希望を書いて出口の「お客様の声」ボックスに名前・住所・電話番号を明記して入れたが、店からは一切返事がなかったという。それ以来誠意のない店として利用するのを止めただけでなく、周りの人に不親切な店という口コミをしている。一般に人は良い経験をすると3〜4人に話し、嫌な経験をすると10〜12人に話すと言われている。悪い評判ほど伝わりやすいのだから、顧客には満足させられなかったとしても嫌な思いだけはさせてはならない。
素人の人がビジネスを起こして成功することが多々ある。逆に長年サービス業をしていた人が失敗することが始終ある。成功した人に秘訣を聞くと顧客の声を素直に経営に反映しただけと応える。逆にベテランの経営者の失敗はお客のことを知ったつもりで自分の売りたいものを売っていった結果だ。
有名な経済学者のピーター・ドラッカー氏が「本当のマーケティングは、対象顧客のニーズと価値観からスタートする。そして小売業は何を売りたいかでなく、顧客が何を求めているかをベースにしなければならない」と述べている。顧客の声を素直に経営に反映するこれこそが「カスタマー・イン・マーケティング」なのだ。

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