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お客は自分が買う商品やサービスに対して、安心という保証を欲しがっている。それは人間には賢い買い物をしたいという願望があるからだ。お金のある主婦でも、バーゲンで値打ち商品を買うと、友達や家族に自慢げに報告をしている。これは賢い買い物をした自分をほめている行為だ。逆に一番後悔するのが愚かな買い物をしたときだ。
お客を安心させるためにも又納得させるためにも効果的なのは、その道のプロの影響力を活用することだ。心理学の世界では「威光効果」と呼ぶが、人間は権威のある人や信用出来ると思われる人の言葉を盲目的に信じやすい。例えば、テレビや雑誌で紹介された商品やレストランが人気化するのは威光効果現象に他ならない。ブランドについても同じだ。確かにブランドには良い商品が多いが、人々がブランドの持つ信頼にそれだけのお金を使うのには安心料という側面がある。
プラシーボとは「満足させる」という意味のラテン語である。頭痛薬だといって小麦粉を飲ませたら、頭痛が治ってしまったという話がある。Aグループの患者には鎮痛効果のあるモルヒネを、Bグループの患者にはモルヒネの代用薬を与えたところ、Aグループ患者の50%強、Bグループ患者の40%の痛みが止まったという実験もある。また胃が痛くて胃潰瘍ではないかと悩んでいた人が、信頼している医者から「大丈夫、一晩ぐっすり眠れば治る」と言われただけで胃の調子がすっかり良くなってしまったというケースもある。信頼している医師の言葉の「プラシーボ効果」である。私が以前勤務していたジョンソン・エンド・ジョンソンでの経験であるが、100円が歯ブラシの主力価格帯であったその当時、リーチ歯ブラシを市場化するに当たり250円という破格の値段を付けた。その値段では高すぎて到底消費者に購入してもらえないだろうという声が圧倒的だった。しかし米国でのマーケティングが大成功していたので会社には自信があった。そのマーケティングとは「歯医者さんがお奨めする歯ブラシ」というキャッチフレーズを使ったことである。コマーシャルやポスター等にこのキャッチフレーズと実際の歯医者さんをモデルとして使った。その結果消費者から絶大なるサポートを得て大成功を収め、20世紀の大ヒット歯ブラシ商品の一つと言われている。
説得を効果的にするには、信憑性が問題になる。信憑性は「専門性×信頼性」によって成り立つもので、専門的な知識や能力を持っている人の言うことは信憑性が高い。但しその人が確かに信頼出来ると思える人物でないと、どんなに専門性が高くても信憑性にまで高めることは難しい。大リーグで活躍しているイチローが使っているグローブやバットだというと、非常に信憑性が高くなる。それは彼の持つ超一流の専門性と、野球に打ち込む姿勢から来る信頼性が、その商品に対する信憑性を高め、説得効果を強めているからある。

ウォルグリーンのチラシには、必ず薬剤師からのヘルスに関するワンポイントアドバイスがのっている。それは顧客にヘルスに関する情報を与えたいという純粋な気持ちと、もう一つにはチラシを権威付けして他社のチラシとの差別化を図ろうとしているからである。また販促でも季節毎に薬剤師お奨めの商品コーナーをエンドで作って成功させているドラッグストアが多いが、これは販促に薬剤師の権威を上手に活用している例である。
日本の某ドラッグストアで、非常に繁盛している店がある。その店は若い女性客が非常に多い。ピアスイヤリングをするために耳に穴をあけたい顧客のために、「当店では下記の医師をご紹介致します」と、5人の医師の名前と病院名が書かれたPOPがあった。これが非常に優れたPOPであると言えるのは、医師という専門家の名前を店内に張り出すことによって、店の信頼性を一層高めているからである。
ワインの販売をする友人がフランスへ行って非常に気に入ったワインを見つけた。値段もバカ高くないので数ダース輸入し、さぞかし売れるだろうと期待に胸をふくらませて店頭に陳列したが、1ヶ月たっても一向に売れない。困って相談に来た彼に、ワインに権威付けをしたらどうかというアドバイスをした。「あのシャトーゴロバティのワインがやっと入荷しました!」という言葉から始まって、「ワイナリーの所有者であるゴロバティ氏が丹精こめて作ったこのワイン」と続けて権威付けをしてみた。効果あり。人々の信頼を得てその後2週間で完売してしまった。いくら良い商品でも人々が安心できる権威付けをしないと、愚かな買い物はしたくないという意識の強い消費者はなかなか手を出してくれないという良い例である。
この「威光効果」を活用するにあたって注意しないといけないこといくつかある。


威光効果を活用するといっても、押し付けると人は反発を感じてしまう。強制されると反発したくなるのは、人間の心理的リアクタンス(反発)現象である。例えば「たばこは身体に害である」という情報は、喫煙者に不協和音を生じさせる。そこでその不協和音を消そうとして、「たばこを吸っていても長生きしている人は沢山いる」「ストレス解消に役立つ」という方向へ自分の考えを持ってゆく。極端なケースになると、「たばこの害は証明されていない」と無視する方向に働く。私の友人の経験であるが、目が痒いのである日本のドラッグチェーンで目薬を求めたところ、そのチェーンが属するボランタリーチェーンのPBを出してきた。参天製薬やロートのようなNB商品はないのかと聞いたところ、「お客さんの症状にはこれが良い」と押し付けてきた。友人は押し付けられたと感じむっとして店を出た。薦められた商品は友人の症状にベストであったかもしれない。しかし彼は「店が儲かるから押し付けてきた」ととらえ、心の中に心理的リアクタンスが出てしまったのである。特にシニア客は自分の価値観を強く持っているから、押し付けを非常に嫌う。必ず商品を選択できるような陳列やカウンセリングが重要である。


威光効果をより効果的に活用するには、薬剤師や栄養士の制服をきちんと身につけると良い。制服には次のような効果がある。第1に、服装が気分を変える。疲れていてもユニフォームを着るとシャキッとすると言ったスポーツ選手がいた。制服を着るという行為がプロ意識を呼び覚ますのだ。近頃米国では小・中・高校で学生に制服を着せる傾向が出てきている。制服を着せた方が非行に走らないし、勉強も良くするという調査結果に注目したからである。第2に、制服を着た人はその制服の集団イメージと同一視されるからだ。白衣を着た人は、医師や看護婦など医療関係の人と見られ、信頼感を寄せられる。料理を作る人は料理人の格好、ソムリエはソムリエの格好をした方がお客の信頼感が高まりより美味しく感じられる。第3に、制服には集団への帰属意識を高めてチームワークを作りやすい。なぜ軍人やスポーツ選手に制服やユニフォームを着せるかといえば、「for the Nation(お国のために)」や「for the Team(チームのために)」意識を向上させるためである。第4に、制服には仕事をスムースに進めやすくする威光効果がある。人は制服を着た警察官、医師、看護婦の言うことは素直に聞く。例えば、看護婦に「シャツを脱いでください」と言われたり、制服を着た駐車場係りに誘導されればそれに従う。小売業においても、制服を作業服と考えず、お客の信頼と従業員の職業意識を高めるユニフォームであると認識して活用する必要があるだろう。
日本の小売業は陳列商品にもっと「プロのお奨め」の言葉を使った方が良い。米国のファーマシーやドラッグストアでは「薬剤師お奨めの商品」が、スーパーマーケット売り場では「生産者からの言葉」のついている商品は一段と売れる。「宮内庁ご用達」に絶大な信頼が寄せられるのも「威光効果」の典型である。信頼出来る人や地位・職業によるお墨付きには理屈抜きの信憑性があり、説得効果があるのだ。


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