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2009年の減益から再出発するために、ウォルグリーンは「お客様が病気から回復し、健康を維持し、質の高い生活をするために必要な「私のウォルグリーン」と呼ばれる存在になる(My Walgreens for Patients to Get Well, Stay Well and Live Well)」という新しいビジョンをつくった。ウォルグリーンの2011年度の実績は次の通りだ。売上げは37年連続増収の前年比7.1%増の722億ドル、純利益は前年比29.8%増の27億ドルを記録した。既存店舗の売上げ増は3.3%と前年の1.6%を大きく上回った。店舗数は8210店舗で、前年比わずか164店舗の増加だ。既存店舗重視への方針転換からの結果だが、2010年まで500店舗以上の店舗増をしていた時代から比べると大きな違いだ。しかしドラッグストア店舗の7761店舗は、米国民の75%がウォルグリーンの店舗から5マイル以内に居住していることになる。粗利益率の向上(28.4%)と販売管理費の削減(22.9%)により営業利益率は0.9ポイントも増加し、6.0%を記録した。この実績は7761店のドラッグストア、355ヵ所の企業内ヘルスセンター、83ヵ所のインフュージョンサービス施設、9ヵ所のスペシャリティファーマシー、2ヵ所のメールサービス施設全体での結果だ。

【ウォルグリーン2011年の業績(2011年8月31日)】
項目

2011年

前年比
売上額
72,184百万ドル
+7.1%
既存店売上伸長率
3.3%
+1.7ポイント
調剤売上額
46,900百万ドル
+6.3%
調剤既存店売上伸長率
+3.3%
+1.0ポイント
純利益額
2,714百万ドル
+29.8%
粗利益率
28.4%
+0.3ポイント
販売管理費率
22.9%
▲0.1ポイント
営業利益率
6.0%
+0.9ポイント
純利益率
3.8%
+0.7ポイント
回転率
9.0%
▲0.1ポイント
ROE
18.6%
+4.1ポイント
処方箋件数
778百万枚
+5.3%
処方箋シェア
20.0%
+0.5ポイント
店舗サイズ
290坪
+1.0坪
店舗数 8,210(全米及びプエルトリコ)
・ドラッグストア------------------------- 7,761(+199)
・企業内ヘルスセンター------------------- 355(▲12)
・インフュージョン&レスピラトリーサービス施設---83(▲18)
・スペシャルティファーマシー------------------ 9(▲5)
・メールサービス施設------------------------ 2(+0)
+164店舗
商品構成比 調剤薬-------------------65%
OTC---------------------10%
その他商品----------------25%
前年と同じ

調剤薬の売り上げは+6.3%増であったが、既存店舗はわずか3.3%の増であった。処方箋枚数は819百万枚で、小売り調剤市場の20%のシェアを獲得した。この調剤は、ウォルグリーン総売上げの65%のシェアを持っており、基幹部門だ。この低い成長率はブランド薬よりはるかに安いジェネリック薬の処方箋件数が上昇したことによる(ジェネリック薬の調剤枚数シェアは74%)。また保険会社などの第三者機関による売り上げが95.6%となり、利益の出る現金調剤の低下が調剤薬の利益を低くしている。2012年より薬剤給付管理会社(PBM)のエキス・スクリプトとの契約を更新しないため、調剤の売上げの伸びが危惧されている。

【調剤薬の推移】
項目
2011年
2010年
2009年
調剤薬売上構成比
64.7%
65.2%
65.3%
第三者機関売上構成比
95.6%
95.3%
95.4%
調剤枚数
718百万枚
695百万枚
651百万枚
調剤店舗
8,210店
8,046店
7,496店

            堅調な実績を上げた背景には、次の5つの柱の戦略がある。


今までのHBCスタイルのドラッグストアを超越して、健康美容商品と日常生活用品のデスティネーションストというHDLストアに転換した。そして地域のヘルス&ウエルネスセンター機能とコンビニエンスストアの機能を大きく取り入れている。2011年シカゴで実施した20の実験店舗とデュエンリードのウォルストリート店での実験の成功にかんがみ、全米に拡大している。単なるドラッグストアを超えて、健康と日常生活のためのデスティネーションストアというコンセプトで、特にシカゴで実験した12店舗の食品を強化した「フードオアシスストア」が大成功したために、これからの3年でフードデザート地帯(食料品を買う場所が少ない地域)に「フードオアシスストア」を1000店舗作ることを宣言し、強力に推し進めている。

a) フレッシュフードやアルコールの導入
食品の強化では、新鮮でヘルシーな食品の提供をコンセプトに、カット野菜、カット果物、バナナ、サンドイッチ、お寿司などファストフード類を積極的に取扱い。また店によっては簡単なイートインカウンターを設け、コーヒーショップやファストフードの機能を取り入れている。
また米国ではアルコール中毒が社会問題となっており、ウォルグリーンはその原因となるアルコールの販売を控えていたが(ウォルグリーンはかつて全米一のアルコール販売企業)、睡眠促進・血液循環促進・ストレス緩和等アルコールの持つメリットに焦点を当て再度積極的に拡販

b) ビューティーケア部門の売場を革新
買収したドラッグストア・デュエンリードのノウハウを活用し、都会型アップスケール店舗では、ビューティーケアコーナーに魅力的な「Look Boutique」コンセプトを取り入れ、ハイセンスのビューティーケアコーナー・高額ラインの化粧品の品揃え・専門性の高いコスメティシャンの配置を実施

c) 1ドルレンタルビデオマシーンの設置
顧客の来店頻度を増すために、レッドボックスという1日1ドルの自動ビデオレンタル機を設置している。ビデオは顧客を2度店に運ぶ(借りに来て、返しに来る)からだ。

d) プライベートブランドの強化
価格志向のお客に応えるために、今までのプライベートブランドに新しいブランドネームの「Nice」及びデュエンリードの「Good & Delish」の両方を加えた。今では400アイテム以上のグローサリー及び家庭用品がある。PBの売上げ構成比は現在の14%から20%へ持っていく計画だ。


単なるファーマシーから医療の分野も取り入れ、患者に質が高く、便利で低コストのヘルスケアを提供することにより、ヘルス&ウエルネス(健康と幸福)ソリューションを目指している。

a) ファーマシー機能の強化
今後の調剤市場は、2014年からスタートする新ヘルスケアシステム(ACA)により、32百万人の調剤患者の増加及び高齢者の増加により、市場は拡大すると予測されている。そのため次のような事柄に力を入れていく。

 

イ)ジェネリックや90日処方(30日処方より6〜8%の節約)のさらなるに促進

 

ロ)モバイルサイト、i・phone、その他スマートフォーンアプリケーションを積極的活用
ウォルグリーンと顧客の双方向コミュニケーションをより充実し、モバイルフォーンを持つ消費者がショッピングや調剤の依頼を出来るようにして、オンラインとオフラインを結びつける理想的な形を作り上げることを目標にしている。「Refill by Scan」(モバイル電話に付いているカメラで、調剤薬のボトルに付いている調剤ラベルのバーコードを撮りウォルグリーンに送るとリフィルの調剤が出来る仕組み)を導入し、2011年には3百万のダウンロードがされた。

ハ)調剤キオスクマシーン・テレビ相談の強化
調剤薬のキオスク(ベンディングマシーン機能)が空港・ショッピングセンター・オフィスビルに設置され、患者はそこでリフィル調剤薬を取り出せる。またテレビ画面を通して薬剤師と相談できる。

ニ)14ヶ国語への対応
国際化に合わせて日本語を含んだ代表的な14の外国語に対応し、薬剤師による薬のカウンセリングが電話を通して受けられる。

ホ)Pharmacy Chat
薬に関する相談を、薬剤師やテクニシャンから24時間オンラインで受けられる
ヘ)調剤の待ち時間の短縮15分調剤を目指しているが、待ち時間を43%も短縮

b) インストアクリニックの強化
「ファーマシー&ヘルスセンター」を通して、インフルエンザ予防接種や他の免疫注射を積極的に実施。その結果640万人のインフルエンザ予防接種を実施したが、連邦政府に次いで多い接種数であった。今後プライマリーケア医師の不足を考慮して、現在357か所のインストアクリニック(Take Care Clinic)を5年間で増加させ、より患者に便利な医療サービスを提供していく。

c) 医療機関との提携
ヘルスケアにおける専門性を高めるために、現在提携しているメイヨクリニックに追加して、ジョンホプキンスメディカルセンター、ルイジアナ州立大学、オクスナーヘルスシステムなどと提携し、患者の相談にのっている。

d) 薬剤師の患者とのコミュニケーション強化
新しい店舗では、薬剤師が調剤室から店内に出て、より患者と親身のコミュニケーションが出来るような構造にした

e) ホームインフュージョンサービス及びスペシャリティファーマシー
ウォルグリーンはホームインフュージョンサービス分野では最大の提供者であり、スペシャルティファーマシーでも大手である


3年の不況を経てアメリカの消費者は単に良い商品を低価格で購入することだけでなく、「楽しいショッピング体験」や「親切な接客」そして「従業員との結びつき」を求めていることが調査の結果分かった。

a) 接客教育の強化

顧客に便利性や専門性の提供だけでなく、良い接客により素晴らしい買い物体験をしてもらい、従業員及び店舗との心のつながりが出来て「My Walgreens」という感情を持ってもらうための接客に関する教育を徹底している。2011年5月ミズーリー州ジョプリンを襲った大竜巻で、甚大な被害が地域に引き起こした。ウォルグリーンの店舗は3店舗あったが、1店舗は全壊、1店舗は半壊、1店舗は被害が少なかった。ウォルグリーンは使える店舗を緊急医療センターとして活用し、赤十字の医療スタッフに必要な商品や機器は提供した。また被害が少なかった店舗では24時間運営し調剤薬を提供し続けた。これらの行為を通し、地域の人々とウォルグリーンの店舗そして従業員との間に心の絆が出来、まさに人々に「My Walgreen」と呼ばれる存在になった良い例だ。

b) ロイヤルティカードの導入

2012年から他企業との差別化のあるロイヤルティカードプログラムを導入する。


今までの単なるドラッグストア店舗だけの「待ちの小売業」から、顧客がどんな方法でもウォルグリーンにアクセスできるよう「顧客の所へ出向く小売業」を目指してマルチチャネル企業へ脱皮している。そのためドラッグストア店舗のみならず、顧客がより便利にウォルグリーンを利用できるように、E-コマースやモバイルテクノロジーに対応している。そして「What They Want(欲しい商品を)」「Where They Want(どこでも)」「When They Want(いつでも)」求められるようにしている。ちなみにWalgreen.comはフード/ドラッグ業界で顧客サービスNo.1、フォト及びオンラインファーマシーのリフィルでNo.1で、現在最も優れた「Bricks & Clicks(店舗とネット併合スタイル)」小売業になった。

a) ネット販売

モバイルを使用してリフィル調剤、写真の注文や毎週のチラシを見ることが出来るし、20万アイテムの商品を購入することができる。ウォルグリーンの調査では、店舗とネットの両方を活用するお客は、店舗のみ又はネットのみの利用客より3倍の購入額があるため、マルチチャネル利用の顧客の増加をもくろんでいる。

b) ドラッグストアドットコムの買収。

E-コマースドラッグストアのトップであるドラッグストアドットコムを2011年3月に409百万ドルで買収し、ネットビジネスを強化して6万アイテムに及ぶ健康美容商品を追加した。

c) 「Web Pickup」プログラムの導入

20ドル以上の買物をネットで注文すると、最短1時間で注文した商品を店でピックアップ出来るようになった。


2008年からスタートした年間10億ドル目標のコスト削減プログラムは計画をオーバーした。
これらの業績及び活動により、ウォルグリーン社はフォーチューン誌の「世界で最も称賛される会社」ランキングで18年連続リストされ、「フォーチューン500企業リスト」で32位にランクされた。
このウォルグリーンの新戦略は米国の他のドラッグストアで踏襲されるだろうし、日本のドラッグの今後に大いなる示唆を与えている。

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