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米国の不景気は、公式には2007年12月にスタートし、2009年6月に終了したことになっている。しかし実感としては、高い失業率(長い間9%台)、2.5%程度の低いGDP成長率、株価や不動産価格の長期下落と経済は冷え込んでいた。しかしクリスマス商戦の序盤は好調(感謝祭週末の小売り及びウエブサイトの売り上げは前年比16%増)、感謝祭明けの月曜日のサイバーマンデーは前年比22%増、12月の失業率は8.5%へ低下と、経済も少し上向きになってきた様子がうかがえる。長い不況が続いた米国で小売業(外食含む)は比較的健闘し、2010年度は前年比6.6%増の4.4兆ドル、2011年1月〜11月でも前年比7.8%増と堅調。好調なのはインターネットショッピングや通販の無店舗販売で、市場規模は13.5%増の3618億ドルで、食料品店・外食に次いで3番目に大きく、小売市場全体の8.2%のシェアを持ち2011年も好調維持。一方、唯一のマイナス成長は百貨店で、市場規模は1863億ドルで、前年より0.8%縮小した。

【2010年度米国小売・外食業界概況】
業態

2010年売上高
($億)

増減率
(%)
小売に占める
シェア (%)
11年1月〜11月
($億)
増減率
(%)
小売・外食売上高
44052
6.6

-

42288
7.8
小売売上高
39313
7.1
100.0
34816
7.4
家具・室内装飾品店
915
2.3
2.3
807
1.5
家電店
1027
2.6
2.6
881
0.9
ホームセンター
2884
6.3
7.3
2771
5.9
食料品店
5895
2.4
15.0
5583
5.5
(うちスーパーマーケット)
(5255)
(2.3)
(13.4)
(5019)
(5.7)
健康・美容関連店
2642
3.8
6.7
2492
4.8
衣料・装飾品店
2193
5.1
5.6
1957
5.6
ジェネラルマーチャンダイズスト
6098
3.0
15.7
5567
3.6
(うち百貨店)
(1864)
(-0.8)
(4.7)
(1579)
(-1.0)
無店舗販売
3618
13.5
9.2
3500
13.1
外食
4739
3.1
-
4501
5.5
不景気が続く中で比較的健闘した米国の小売業が取った戦略は、「SENLO」という言葉でまとめられる。


ガソリン価格の高騰、多忙な人の増加、高齢化社会の促進により、消費者の近場での便利な買物ニーズが拡大した。それに対応するために、各小売業は店舗を小型化した。ウォルマートの例を取ってみれば、「ウォルマートエキスプレス」という200〜300坪程度のスーパーマーケットを展開し始めた。大商圏、4000〜6000坪という超大型店舗、待たせるレジと便利性とは無縁であったウォルマートが、小型店舗を作り消費者ニーズに対応せざるを得ない状況になった。また家電量販のベストバイ、オフィス用品専門店ステープルズ、オフィスデポ、百貨店のシアーズ、JCペニー、玩具のカテゴリキラートイザラスなども小型店業態の開発を実施中で、大きすぎる既存店舗は一部をリースへ出し始めた。「Small is Beautiful」の時代に入ったのかもしれない。小商圏ビジネスでは、商圏人口が限られているために、来店頻度を高めることが成功のカギを握っている。来店頻度を高めるために、家具チェーンのイケアでは99セントの朝食、コストコでは1ドル50セントのホットドッグ&コーラセットの提供、スーパーマーケットやドラッグストアではレッドボックスという1日1ドルのビデオレンタル機器の設置、ジュエルスーパーでは来店するたびに色々な商品が当たる抽選券の提供、CVSドラッグでは来店ごとに店内に設置されている機器でポイントカードのバーコードを読み取らせると自分に適した商品のマイ・クーポン券が出てくる。ウォルグリーンでは次回の購入で割引されるレジスターリワードという券がレジで渡される。


長い不景気を経験した消費者の衝動買いが低下したため、購入するメリットを訴求する消費者啓蒙が盛んに行われた。スーパーのホールフーズマーケットの例を紹介しよう。

a) 食生活改善プログラム
2011年8月からホールフーズマーケットのマサチュセッツ店では、会員制ウエルネスクラブをスタートした。メンバーは健全なライフスタイルを取り入れるための個人指導、食品の買物や料理指導、栄養クラスその他有料イベントが無料になり、さらにヨガ、フィットネス教室、マッサージや料理教室などの参加費が割引き、6000品目以上の商品が10%値引きで購入できる。これは短期間で成功をおさめたある会社の食生活改善プログラム(ヘルス・スターツ・ヒア)が基盤で、多くの社員が肥満、高血圧や高コレステロールを解消。そのアイディアを全店で導入し、ヘルス・スターツ・ヒア推奨商品は惣菜売場で大きく展開されている。


b) 魚介類の持続可能レベル格付け表
自店で販売している鮮魚の漁獲状態を徹底調査。絶滅危惧種の販売を中止するとともに、持続可能レベルを色分けした独自の格付け表を店頭に提示。絶滅危惧種には赤、絶滅の可能性のある品種には黄色、持続可能な品種にはグリーンのシールが貼られている。魚介類は天然と養殖とを区別し、天然の魚は海洋管理協議会に認定されたものを仕入れる。
c) 精肉の飼育状況格付け表
精肉は家畜の飼育状況を調査し、ステップ1から5+までの格付けし、売り場で表示されている。ステップ1は「木箱やケージが取り払われ、自由に動き回れる環境」ステップ5+は「良好な環境で育てられ、生涯同じ農場で飼育」と定義づけ。

d) 栄養評価システム
ANDIという栄養評価システムを導入。青果、食品、飲料の格付けを始めた。最高特典は1000点で、ケールやクレソンが該当し、最も点数が低いのは炭酸飲料で1点と、それらが売場で表示されている。ここまで徹底しなければ主顧客である高学歴・高所得者層の離反を食い止められないのだ。


米国の小売業におけるインターネットの売り上げ構成比は、2010年に9.2%を記録し前年比14%近い成長をしている。米国の小売業の成長は、ネットの成長に負うところが大きい。インターネットショッピング市場の拡大及びスマートディバイスの普及で、各小売業はネットショッピング機能を強化。小売業各社は売上げ拡大を狙ってインターネットショッピングやモバイル・コマース、ソーシャルメディアといった分野への投資を拡大している。ウォルマートはエリア限定で「ウォルマート・トゥ・ゴー」の実験を開始。スーパーのセーフウェイやコストコもインターネット販売に進出。ドラッグストアウォルグリーンはネットショッピングやスマートフォンのアプリケーションを貸し出し顧客の囲い込みをしている。最近ではスマートフォン向けアプリケーションの「リフィル・バイ・スキャン」を導入した。処方箋のボトルに付いたバーコードをスマートフォンのカメラで読み込んで、リフィルの処方薬を注文できる仕組みだ。また顧客と薬剤師や美容部員とのコミュニケーションがネットで出来るようになった。ウォルグリーンの調査によると、店舗とネットの両方を活用する顧客は、どちらか一つを利用する顧客より3倍の購入額が高い。このこともネット機能を各小売業が強化している要因でもある。


青果やパン売り場に行くと、「ローカル」という文字のPOPが目立つ。このように各小売業が地域密着戦略を強めているのには次のような背景がある。

a) フードマイレージ
フードマイレージは、食料の輸送に伴って排出される二酸化炭素が、地球環境に与える負荷に着目した考え方で、食品の生産地と消費地が近ければフードマイレージは小さくなり、遠ければ大きくなる。環境に関心の高い人々が増加している現在、消費者はフードマイレージの少ない食品を好む傾向がある。

b) 地域経済の活性化
地元で採れた農産物を地元で消費する地産地消によって地元の経済が潤うことを訴求し、「Shop Local」POPで地元の小売業やメーカーの商品購入運動を促進している。又消費者はどうせ買うなら地元のものを購入しようという意識が高くなっている。

c) 身土不二
地元で採れた食品が地元の人の身体に一番適している考え方が普及している


米国内の景気の不透明感と新興市場の急成長が、小売業各社の海外市場進出を後押している。世界一の小売業であるウォルマートは、海外売上比率を現在の26%から数年先に50%に上げることを宣言した。進出国の魅力度ランキングではブラジルが1位。2位ウルグアイ、3位チリ、4位インド、5位クエート、6位中国、7位サウジアラビア、8位ペルー、9位アラブ首長国連邦、10位トルコと続く。
この「SENLO」戦略は日本の小売業にも必要な時代になっている。

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